この記事では、「働くセーター」を初心者が編んでみた感想や、工夫した部分などをご紹介していきます。
セーターのような大物を編むには、制作に結構な時間を費やすことになりますし、材料費もそれなりにかかります。
編んでから「想像してたのと違った」となるのは、極力避けたいものですよね。
今回は、セーターの難易度やサイズ感をはじめ、ジェイミソンズの毛糸についてもレビューしていきます。
- 編むかどうか迷っている
- どの毛糸を使用すべきか悩んでいる
働くセーターとは?
「働くセーター」は、ニットのオーダー製作などをされているニット作家・保里尚美さんの作品です。
働く人のための動きやすいセーターという、実用性を重視したコンセプトが特徴。
文化出版局から、このセーターの作り方を解説した本が出版されています。
本には、働くセーターを着て実際にカフェなどで仕事をする人たちの写真が載っていて、セーターが実生活の中で“生きている”様子が見られるので、眺めているだけでもワクワクしてしまいます。
作品はセーター、カーディガン、ベストの3種類だけですが、それぞれレディースS・M・LとメンズM・Lの5サイズずつの作り方が載っています。
サイズは、ただの大きさ違いというだけではなくて、微妙にシルエットが違っていたりリブのデザインが違っていたりするので、よく見ると結構バリエーションが豊富です。
セーターはおしゃれ着というイメージがありますが、その昔は漁師や兵士の仕事着でもありました。働くセーターは、「実用性」というセーターの本質が感じられますよね。
使用する道具について
「働くセーター」指定の道具
働くセーターを編むにあたって、必要な道具をそろえる方もいると思うので、簡単にまとめました。
ただし、今回ご紹介するのはセーターの道具です。ベストやカーディガンは使用する針が若干違うのでご注意ください。
働くセーターはトップダウンで編んでいくので、編みだし糸で別鎖を作って編み始めます。
編みだし糸とかぎ針も要るので、忘れずに準備しましょう。
実際に使用した道具
先ほどは本の指定の道具をまとめましたが、次に実際に私が使用した道具をご紹介します。
まず、4本針は使用せず、全て輪針で編みました。
3号針は持っていないため、靴下用に使っている1号針でゆるめに編むことで代用しました。
あと、別鎖は自宅にあったたこ糸で作ってみましたが、特に問題なかったです。
たぶん指定の編みだし糸より細いと思いますが、かぎ針の号数を上げてゆるーく編んだのがよかったかもしれません。
ちなみに、今回は輪針セットを使用したので、針やコードは自由に組み合わせられましたが、もし付け替えでない単品の輪針を用意する場合だったらどの針を買うかもちょっと考えてみました。
もし私が最低限の道具で作るとしたら、6号60cm(ヨーク上側、胴周り)と6号80cm(ヨーク下側、マジックループで袖)と4号80cm(ゴム編み部分用。袖口と襟ぐりはマジックループ)の3本あれば、一応セーター全体を編めるかなという気がします。
とはいえ、胴の部分は長いコードのほうが編んでいる途中で試着できるし、ゲージによって針の太さを変える可能性も考えると、付け替え輪針セットが圧倒的に便利なのは言うまでもありません。
使用した輪針セットはこちら↓
サイズ感
サイズ感を見ていきます。
まず前提として、私は身長156cm、体重43kgです。
骨張ったタイプなので、肩幅は広めで、腕もやや長めだと思います。
普段のトップスはMサイズが多いですが、肩幅にゆとりを持たせたい時はLサイズを選ぶときもあります。
今回の働くセーターでは、1(レディースS)というサイズで作り、袖だけ計14段長くしました。
Sサイズとはいえ、これがレディースの一番ベーシックなサイズ・形のようなので、肩幅や丈感はサイズ1でピッタリです。
編んでいる途中は、袖がタイトかなと少し心配だったのですが、編み上がると全然気にならないし、むしろ腕にほどよくフィットして動きやすいです。
トップダウンで編むので、袖丈や着丈は自由に調節できます。
私も途中で何度も試着して、最終的に袖を14段長くしました。
ちなみに働くセーターは、レディース用とメンズ用で袖のシルエットが異なっており、カーディガンのほうは男女ともメンズセーターと同じ袖になっています。
レディースセーターの袖は全体的に少し細く、袖口のリブも長いのが特徴。腕がスッキリして見えるし、腕まくりして作業するのには最適です。
5つのサイズバリエーションが載っているからこそ、サイズやデザインの微調整をしたい時に参考にできてありがたいですよね。
難易度
私は、靴下などはいくつか編んだことがありますが、セーターを編むのは今回が初めてでした。
結論から言うと、本をしっかり見ながらやれば、1人で問題なく編むことができました。
一番手順が多いカーディガンの作り方だけが写真付きで載っていますが、セーターもカーディガンも必要な技術は同じなので、写真を参考にできます。
一番の課題は二目ゴム編み止めでした。
苦手だったので今まで避けていたのですが、いい機会だから克服しようと、いろんな人のYouTube動画を見たり手持ちの極太糸で練習したりして、なんとかクリア!
どうしても二目ゴム編み止めが嫌な場合は、二目ゴム編みの目を表目と裏目が交互になるように入れ替えて、一目ゴム編み止めにするのでもいいと思います。
逆に言えば、それ以外は特に難しいことはなかったです。
つい熱中して1日に数時間は作業していたので、何か所かほどいて編み直したものの、2~3週間で完成!
慣れている人ならもっと早く編み上がると思います。
あと、作者さんのインスタでは、働くセーターの補足情報や読者からの質問への回答などが見られるので、とても参考になりました。
セーター初心者ですが、大物を編めた達成感があるし自信も付きました。
働くセーターの魅力ポイント
魅力①動きやすい
「働くセーター」の名前のとおり、抜群に動きやすいです。
体に程よくフィットする無駄のないデザインになっており、きつくもゆるくもないジャストなサイズ感。
特に、ヨークや袖の増し目・減らし目の加減を工夫して動きやすい形になるように設計されているのだと思います。
袖もやや細身になっているおかげで、腕まくりしてもスッキリ見えるし、袖が落ちてこないので作業しやすいです。
私は家事をする時にも愛用しています。
トップダウンで編むセーターは他にもよくありますし、一見シンプルで何の変哲もないセーターに思われるかもしれませんが、この動きやすい絶妙な形は唯一無二。
自分が手作りした服でも、ここまで日常生活に使えるのかと感動しました。
指定糸のジェイミソンズスピンドリフトは軽くて暖かいので、こちらも着心地のよさに一役買っています。
魅力②洗練されたシルエット
計算されたシルエットは動きやすいだけでなく、スタイルもきれいに見えます。
レディース用は裾のリブが長めになっていて、腰の位置が高く見えます。サイズ1は丈が長すぎないので、スカートやワイドパンツなどとも相性◎。
袖のリブも長めなので、手首周りがスッキリ見えるのもうれしいです。
また、いい意味で手作り感がないので、外に着ていくのも恥ずかしくありません。
完成したセーターを家族に見せたら「売り物みたい!」と言ってもらえましたし、友人には「本当に自分で編んだの!?」と驚かれました。
大多数の人は言わなければ手編みだと気付かなそう。
魅力③長く愛用できる
働く人のためのセーターだから、耐久性もバッチリ。
働くセーターは後ろ前どちらでも着られるし、表裏もどちらでも着られます。
どういうことかと言うと、まず前後の差がないので、後ろと前という区別がありません。
そして、毛糸は糸の端同士をからませてつなぐので糸処理の必要がなく、裏側もきれいな状態なのです。
裏返しで着るとこんな感じ。
裏目のセーターになるので少し印象は変わりますが、別に違和感はないですよね。
セーターは、よく擦れる部分など特定の場所から消耗しやすいので、前後と表裏をローテーションすれば長く着ることができます。
さらにトップダウンだから、袖・裾・首周りの消耗しやすい部分は、後から編み直すことも可能。(首周りのリブも、拾い目をして後から編んであります。)
どうしても消耗してしまうものではあるけど、ダメージが一か所に集中するのを防ぐ構造になっていたり、傷んだら手直しできるようになっていたりと、長く着るための工夫が詰まっています。
ガシガシ着られる頼もしいセーターです。お手入れしながら長く着続けたいですね。
ジェイミソンズスピンドリフトについて
働くセーターの指定糸は、ジェイミソンズ社の「シェットランドスピンドリフト」です。
ここからは、この毛糸についてご紹介していきます。
基本情報と質感
ジェイミソンズ シェットランドスピンドリフト | |
---|---|
太さ | 中細 |
原料 | ウール(ピュアシェットランドウール)100% |
仕立て | 1玉25g(約105m) |
原産国 | イギリス |
ジェイミソンズ社は、スコットランドの北に位置するシェットランド島の毛糸会社です。
スピンドリフトは、フェアアイルの編み込みによく使われる中細の糸なのですが、これを2本取りでセーターに使用します。
繊維が縮れていて絡みやすいので、使い込むとフェルトのようになじんでいくのだそう。
ザラリとするような素朴な手触りだけど、丈夫な毛糸だからこそ働くセーターにはピッタリなのだと思います。
そして、スピンドリフトは色のバリエーションがとにかく豊富で、他にはない絶妙なカラーがそろっています。
たくさんのバリエーションの中から、自分好みの色を選ぶのも楽しみの一つです。
スコットランド北方のシェットランド諸島。
夏でも最高気温が15℃ほどという寒冷な気候のため、温かくて良質な羊毛が採れます。
また、シェットランドシープは体が小さくて、1頭から採れる毛の量が少なく、希少価値があることも値段の高さに関係しているようです。
編んでいると、たまに草の繊維が混じっていることがあるのですが、そのたびに草原で寝転がっている羊の姿を想像しては和んでしまいます。(寒いから本当はもっと過酷な環境で生きているのでしょうけど…。)
ちなみに、犬種の一つに「シェットランド・シープドッグ」という種がありますが、彼らはシェットランド島の牧羊犬がルーツですね。
実際に使用した感想
すごく上質な毛糸ですが、カシミヤやアルパカのようななめらかな手触りではなく、もっと素朴で無骨な感じがします。
それでも、編んでいる途中はモコモコとした手触りが心地よかったです。
着るとチクチク感はありますが、自分で編んだという愛着もあってか、それほど気になりません。
作者さんによると、植物由来の粉せっけんで洗うことでフワフワになるとのこと。
私は仕上げ洗いに、我が家で使っている植物性石けん素地のみのボディソープを使用しましたが、手触りは特に変わりませんでした。
次に洗う際には粉せっけんも試してみようと思っているところです。
私は少々チクチクしても気に入って頻繁に着ていますが、アトピーなど肌が敏感な方は少し注意したほうがいいかもせれません。
使い込むほど手触りもよくなるそうなので楽しみです。どうしても気になる場合は、ハイネックのインナーを着るという手も。
色は「103番Sholmit」を選びました。
写真に撮るとシルバーっぽいキリッとした色に見えるけど、実際はもう少し優しいグレーにも感じます。
グレー系でも種類がたくさんあって迷ってしまいましたが、sholmitは原毛の風合いが感じられるし、どんな色のボトムスにも合わせやすくてよかったです。
ジェイミソンズスピンドリフトは1玉1,000円弱ほどなので、何玉も買うのは勇気が要りましたが、働くセーターの魅力を最も感じられる毛糸ですし、長く愛用できるセーターになったので、指定糸を買ってよかったです。
入手方法
ジェイミソンズの毛糸は、一般的な手芸店や、Amazon・楽天などでは取り扱いがほぼありません。
ジェイミソンズから輸入・販売している日本のショップから購入するか、海外から直接的に個人輸入するかの2択になるかと思います。
個人輸入したほうが値段は安い傾向にありますが、届くまで時間がかかるし、配送トラブルなどの際に英語のメールでやり取りするなど手間がかかる可能性も。
値段と手間を考えて、どこで買うか決めるのがよさそうです。
SHAELA、amuhibi、amirisuなどは実店舗もあるので、近くに住んでいる方はぜひ実物を見て買ってください。
今回私は、SHAELAさんのオンラインサイトで購入しました。
個人輸入と比較検討しましたが、為替レートの関係か、SHAELAさんの値段と大差なかったからです。国内発送の方が安心で速いですしね。
働くセーターのサイズ1ではスピンドリフトを16玉使用するので、1玉余裕を持って17玉購入して、12,155円(送料別)でした。
袖を長くしたものの、16玉で足りました。ただし、デザイン変更や編み直し用に1~2玉余裕を持って買っておくのがおすすめです。
代替案
もし、どうしても別の毛糸で代替したい場合はどんな毛糸がいいのかも、考えてみましょう。
まず、毛糸の太さは中細を2本取りにするか、並太でよいかと思います。
毛の種類は、同じシェットランドウールだと、ダルマのSHetland Woolがあります。
値段はジェイミソンズとあまり変わりませんが、手に入れやすいのは大きなメリットです。
シェットランドにこだわらなくても、同じような環境で育ったウールということでブリティッシュウールを選ぶ手も。
その他の種類なら、クリンプ(繊維の縮れ)が強いウール100%の毛糸がよいと思います。
糸始末なしで編むから裏返しでも着られるという働くセーターの特徴を生かすためには、毛糸同士が絡みやすい縮れた毛糸を使用することが重要です。
クリンプが強く弾力のある毛糸でいうと、スパニッシュメリノやニュージーランドメリノなどがあります。
しかし、指定糸でない毛糸を使っても、軽さや丈夫さなどを考えて選ぶと、結局それなりの値段になります。
ジェイミソンズの毛糸自体も、働くセーターの魅力の一つではあるので、特に1枚目には指定糸を使用することをおすすめしたいです。
毛糸の軽さも着心地に影響します。せっかく手間をかけて編むのだから、質のよい毛糸で編みたいですね。
まとめ:抜群に動きやすく、お気に入りの1着に。
私も編む前は、「本当に最後まで挫折せずに編み切れるかな?」とか「編んだセーターをちゃんと着るかな?」と不安が多々ありました。
毛糸代もかかるし、かなり勇気を出したトライだったのですが、結果的に大満足!
難易度が高くないから作る過程も楽しかったし、出来上がったセーターも冬服のスタメン入りするほど気に入っています。
洋裁で服を作ったこともあったけど、結局あまり着ないことが多かったので、今回こんなにも使える服を自分で作れたということが何よりうれしいです。
セーターを編み終えて達成感があると同時に、編み物ロスのような寂しさもあって、すぐにでももう1着編みたいくらい…(笑)。
同じ作者さんのアランセーターの本も出たので、来年はこれを編もうかと早速狙いを定めています。
というわけで、私は「働くセーター」ですっかりセーター編みにハマることになったので、セーター初心者の方にも激推しです。
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